大会長挨拶

第66回 日本人類学会開催によせて

昨年の東日本大震災で,被害を受けた皆さま,いまだに避難・仮住まいされている方々,研究者の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。生活,研究環境などの復帰・復興をお祈り申し上げます。

第66回日本人類学会の学術大会・総会を慶應義塾大学日吉キャンパスで開催することになりました。慶應義塾は近代日本黎明期の高等教育組織として,安政5年(1858)年に開設されました。最古の近代私学が,やはり最古の学会に近い日本人類学会学術大会をお招きすることに,事務局・組織委員会一同心より御礼申し上げます。

皆さまをお迎えする日吉キャンパスは,1934(昭和9)年に大学予科,学生寄宿舎を中心に開設され,藤原工科学校の開設後すぐに帝国海軍による接収,大本営地下壕設営,空襲被害,米国占領軍キャンプを経て,ようやく1949(昭和24)年に返還され,今日に至っています。2011年現在,7学部,3大学院の13000人余の学生・教職員が勉学・研究に従事する,慶應義塾最大のキャンパスです。

慶應義塾大学における,人類学教育は,1919(大正8)年にハーバード大学でPh.D.を取得した移川子之蔵による「人類学概説」が最初とされています。私学としては初めての「人類学」講義が開始されたと思われます。移川の講義内容は,米国型のいわゆる総合人類学でしたが,形質・自然人類学の内容も含まれており,これ以降,慶應義塾大学での「人類学」講義は,形質・自然人類学を講義する自然科学分野科目として,21世紀まで維持されてきました。

第66回日本人類学会大会は,日吉キャンパスの中心に位置する来往舎(教養研究センター)において,すべての研究発表を賄うこととなります。東急東横線日吉駅からは,徒歩3分のところにありますので,横浜,渋谷,目黒から,約30分でお越しいただけます。学会員の皆さま多数の積極的ご参加をお願い申し上げるとともに,活発なご討議,ご議論,ご懇親のうえ,皆さまにとってより高い学術研究の場になるよう,慶應義塾伝統の「半学半教」の実践となるよう,一同心より祈念しております。

第66回日本人類学会大会長
髙山 博
(慶應義塾大学 文学部 人類学研究室)