2012年7月23日(月)[ナショナルジオグラフィックニュース]ネアンデル タール人は野菜好き?
スペイン北部の洞窟から出土した5万年前のネアンデルタール人は植物質の食物や薬草を使っていたらしい、とバルセロナ、カタルーニャ高等研究所の考古学者カレン・ハーディ氏らの研究チームが発表した。7月23日付『ナショナルジオグラフィック』日本版ニュースが伝えている。チームは、この研究成果を同18日付『Naturwissenschaften』誌オンライン版に発表した。
洞窟は、保存の良さからネアンデルタール人骨からDNAが抽出された有名なエル・シドロン洞窟で、5体の歯から採取した歯石を顕微鏡観察したところ、植物質のひび割れした澱粉粒が見つかった。ネアンデルタール人の食べた植物は事前に加熱さ
れていたことを示す。さらに化学分析して、木を燃やした煙に含まれる化合物も見つかった。
一方で、肉に由来するたんぱく質や脂質の痕跡は、わずかしか検出されなかった。
ここのネアンデルタール人は、セイヨウノコギリソウ(ヤロウ)とカミツレ(カモミール)も食べていた。ただ、これらの植物は食物にしても栄養的価値に乏しく、苦い味がするという。ちなみに同じ研究チームによる以前の調査では、エル・シドロンのネアンデルタール人は苦味を感じる遺伝子を有していたことが判明している。
ハーディ氏には、彼らはステーキよりも野菜を焼いて食べる方を好んだだけでなく、薬草を利用した治療法も知っていたと指摘している。口にしたら苦いと感じた植物をわざわざ食べたのは、味覚を目的にしたのではなく、多くの高等霊長類でも見られる自己治療目的だったのではないかという。
ハーディ氏によると、カミツレは神経性ストレスなどに効き、消化不良を改善する薬草としてよく知られ、セイヨウノコギリソウは風邪や発熱に効き、殺菌作用もあるという。