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2012年4月26日(木)[朝日新聞朝刊]独自進化のはずのヤシ林 1万500 0年前、ヒトが植えた?

 乾燥した中央オーストラリアのオアシスにポツンと生えているヤシ林は、実は1万5000年前前後に、現在のアボリジンの祖先が北部から持ち込んで植えたものではないか、と広島大学や京都大学の研究チームが3月15日付の英科学誌『ネイチャー』に発表した。

 このヤシは、その名も「パーム・バレー」と呼ばれるオアシスに、孤立した状態で生えている。最も近い北部のヤシ林とは1000キロも離れており、北部とつながる川もなく、実を食べる小鳥が運んできたにしては遠すぎる。

 これまで、パーム・バレーのヤシはゴンドワナ大陸に広く分布していたヤシ林の生き残りで大陸の乾燥化とともに分断されて細々と生き残っていたと考えられていた。

 しかし研究チームがこのヤシと北部のヤシの遺伝子の差を調べると、さほどの違いがなく、一番近い種とは分かれてから1万5000年前ほどしかたっていないことが分かった。

 これは、アボリジンの祖先が北部から中部に移住した時期と一部重なるので、研究チームはヤシはヒトがパーム・バレーに持ち込み、植えたのではないか、と推定している。