2011年10月27日(木)[朝日新聞朝刊] アルタミラ壁画 劣化の危機なお
世界遺産のスペイン、アルタミラ洞窟壁画が今も劣化の危機の薄れていないことが
分かった。スペイン科学研究機構のチームが米科学誌『サイエンス』に発表した。
1879年に偶然に発見されて以来、アルタミラ洞窟壁画は、人が入ることによっ
て持ち込まれる埃などを栄養源にカビなどの微生物で劣化の恐れが強まり、2002
年より非公開にされていた。
非公開措置によって微生物の増殖が止まり、壁画の腐食や剥がれ落ちなどの懸念は
薄らいだが、06年に考古学調査の入った翌年にチームが検査すると、昆虫やネズミ
の糞、植物の運ぶ菌が増えていた。
同じように劣化の危機が深刻なフランスのラスコー洞窟は、カビ抑制のために塗布
した薬剤の成分が逆に微生物栄養分になり、劣化が進んだ。アルタミラではこの経験
から、微生物の栄養になりにくい薬剤による定期的クリーニングが提案されている。
一部には観光資源として公開を求める声があるが、チームは非公開の継続を求めて
いる。