大会長挨拶
第73回の日本人類学会大会を佐賀大学で開催することになりました。佐賀大学では、今から23年前の1996年、平成8年に前身の佐賀医科大学の時代に第50回の人類学会大会を開催していますので、2度目の大会の開催となります。前回の大会は、人類学会の活動のひとつの区切りとなる大会でした。それまでの大会は、日本民族学会(現日本文化人類学会)との連合大会として行われ、大会の開催も人類学会と民族学会が隔年で担当していましたが、この大会を機に双方の学会は別個に活動をしていくことになりました。以来四半世紀に近い月日が流れたことで、当時を知る会員も少なくなりましたが、再び佐賀の地で学会を開催することで、往年の学会大会を思い出される会員の皆さんもおられるのではないかと思います。平成を終えて新しい令和の時代最初の人類学会大会では、最新の学問に触れるだけではなく、過去を振り返り、現在を知って将来を思う機会が提供できればと考えています。
原点に返るという意味で、今回は参加される皆さんに、日本人類学会の活動全体を俯瞰して頂く工夫をいたしました。これまでの大会では、特定の課題に関してより深い理解を得るために、多くのシンポジウムが行われていましたが、本大会ではそれをやめることにしました。今回は、一般口演55題、若手発表12題、ポスター発表37題のエントリーを頂きましたが、一般口演と若手発表の会場をひとつにしまして、全ての口演を聞くことができるようにしました。参加して頂いた皆さんに、今日の日本人類学会の研究活動の広がりを実感して頂ければと考えております。
一般向けの講演会としては、「弥生人とは誰か―考古学・人類学が明らかにする最新弥生人像」と題して、最新の弥生人に関する成果の報告をいたします。佐賀県には、弥生時代の代表的な遺跡である吉野ヶ里遺跡や、昭和28年に山口県の土井ヶ浜遺跡とともに、最初の弥生人が発掘された三津永田遺跡があり、一般の方々の考古学・人類学の興味関心が高い地域です。前回の50回大会では、池田次郎先生と佐原真先生による日本人の起源に関するシンポジウムを行いましたが、それ以降の研究の進展を、広く佐賀県の皆さんに紹介したいと考えています。大会最終日の開催となりますが、会員の皆さまも是非ご参加いただければと思います。
本大会に参加された皆さまによる、活発な議論を通じて、日本人類学会の発展と会員相互の親睦が一層進むことを祈念しております。
第73回日本人類学会大会長
篠田 謙一