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2011年11月22日(火) 人類の祖先 数十万年かけ移動か

 ジャワ原人化石の重要産出地の1つ、サンギラン地域の上部ホモ・エレクトスの年
代がこのほど確定した。

 兵頭政幸・神戸大教授と松浦秀治・お茶の水女子大教授ら日本・インドネシア合同
研究チームが「アメリカ科学アカデミー紀要」で11月22日に発表した。

 サンギランのホモ・エレクトス産出層の最上部は、松山逆時極期/ブリュンヌ正磁
極期(MB)境界にあたると考えられたが、今回の研究でその移行帯を示す堆積部分
には、世界の他の地区の精細な解析結果と酷似した短期の地磁気反転層を複数挟むこ
とが判明した。また、その上は厚い正帯磁の堆積物で覆われ、この正磁極の地層は、
フィッション・トラック年代などから確実に古地磁気層序のブリュンヌ期に属すると
判断された。これらのことから上記の移行帯はMB境界に当たると分かった。

 サンギランの最上部エレクトス包含層はテクタイト隕石の出土層準とおおむね一致
するが、それは中上部タフ層(UMT)の真下となり、UMTはMB境界の下層に当
たる。世界各地で見つかっているテクタイト隕石の衝突はMB境界より約1.2万年
古いことが判明していることから、今回の研究で、サンギランの上部ホモ・エレクト
スの年代は、約79万年前と確定したことになる。

 これを受けて研究チームは、150万年前を超えるとされる下部のホモ・エレクト
ス年代も再検討の必要があると指摘しており、その場合、出アフリカした初期人類の
東南アジアへの拡散は、従来考えられていたほど「早くまた速やか」ではなく、場合
によっては70~80万年かかっていたことが想定される。