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ポスター発表 11月4日(金)〜11月6日(日) ポスター会場
討論時間 11月5日(土)16:30〜17:15(奇数演題番号)、11月6日(日)12:00〜12:45(偶数演題番号)
家畜化および拡散の研究のための新技術『幾何学的形態測定学』の適用:特に遺跡出土のイノシシ類臼歯について
○藤田正勝(英国ダーラム大・考古、奈文研・特別研究員)、山崎京美(いわき短大・幼児教育)ポール・オーヒギンス、サミュエル・コブ(英国フル・ヨーク医大)、キース・ドブニー(英国ダーラム大・考古)
The application of new technique, Geometric morphometrics, to study domestication and dispersal: On the teeth of Sus scrofa form archaeological sites
FUJITA, M., YAMAZAKI, K., O'HIGGINS, P., COBB, S., DOBNEY, K.
ブタはイノシシを起源とする家畜で、人間と動物の相互作用を知る上で世界的に注目される動物の一つである。動物考古学では家畜の起源やその利用、またその移入に関する研究が進展しているが、未だ家畜化の過程を解明するには至っていない。一方、近年急速に発展しつつある幾何学的形態測定学は、二次元、三次元的な形やプロポーションの変化を統計学的に処理し、様々な形態の要素を比較検討する分野として海外では注目されている。そこで、本研究ではこの手法を縄文および弥生時代のイノシシ類の下顎臼歯に世界に先駆けて適用した。予察的ではあるが、家畜化を考える上で非常に興味ある結果が得られたので、この新技術とその有効性を報告する。
ポスター P−2
ニホンジカにおける採食生態と下顎骨形態の関連性―種内の近縁系統群比較による検討
○尾ア麦野(東大・理・人類)、高槻成紀(東大・総合博)
Correlations between foraging ecology and mandibular morphology in sika deer (Cervus nippon): intraspecific comparisons of close population lineages
OZAKI, M., TAKATSUKI, S.
反芻類の頭蓋はその種の採食生態に適応的な形態を有することが明らかとなっている。すなわち、反芻類の採食生態はイネ科草本を中心に採食するグレーザー、双子葉草本や木本植物の葉などを中心に採食するブラウザー、両者の中間型に分けられ、この類型と頭蓋形態に関連性があることが種間比較により示されてきた。また、こうした知見は化石種の採食生態を推定することにも用いられてきた。本研究では、種間比較で示されている採食生態と形態の関連性が亜種レベルの近縁系統間でどの程度支持されるか検討することを目的とし、遺伝的に異なる2系統群が存在する現生ニホンジカを対象として、下顎骨形態の系統間比較を行った。
ポスター P−3
利き手判別のための動作項目
○富田守(大妻女大)、神部順子(大東大)、関根田欣子(神奈川県立相模大野高)、佐藤真弓(実践女大)
List of motions for handedness decision
TOMITA, M., KAMBE, J., SEKINE, T., SATO, M.
直立とともにヒトの特徴のひとつの利き手について、特に今回は動作項目をより少ない項目を用いて利き手を判別する可能性を探ることとした。19±1歳の女子大生541名を対象に、手指を使う行動の優位側を質問紙で聞いた。前回の調査結果を踏まえ、12項目で調査を行ったが、さらに項目を減らすことが可能であることがわかった。「鉛筆で字を書く」、「包丁で切る」、「ハサミで紙を切る」、「カナヅチを使う」、「ボールを投げる」、「平手打ちをする」の項目が利き手の判別に有効であることが示唆された。
ポスター P−4
拇指と各指によるピンチ動作時の拇指球筋活動の差異について
○関根絵理子、真家和生(大妻女子大・被服)
Activity difference of thenar muscles during each pair pinch
SEKINE, E., MAIE, K.
拇指と第2指によるピンチ動作(以下P1-2)から第5指によるピンチ動作(すなわちP1-3,P1-4,P1-5)を行ったときの拇指球筋および前腕屈筋群の積分筋電値(iEMG)から各ピンチ動作時の各筋の筋負担を比較した。被験者は成人女子10名(7月末現在)。ピンチは小型圧センサーを各指腹で行うこととしピンチ圧はほぼ1kgw/cm^2とした。P1-2の iEMGを100%として比較した結果、全筋についてP1-2 から P1-5 とピンチ指を代えるに伴いiEMGは増大する傾向が示されたが、拇指内転筋についてはその度合いは小さく、前腕屈筋群・短拇指屈筋(拇指対立筋を含む)・短拇指外転筋については増大傾向が大であった。増大率は短拇指外転筋が最大(P1-5/P1-2=ca600%)次いで短拇指屈筋の順であった。
ポスター P−5
トルコ人の身体計測値でみられる地域変異
○バシャク・コジャ・オゼル、片山一道 (京都大・自然人類)、チイムル・グゥルテキン、メフメット・サギル、イェネル・ベクタシュ、ガーリプ・アクン、エルクシン・グレチュ(アンカラ大・人類学)
Regional Variations of Body Dimensions in Turkish Population
OZER, B.K., KATAYAMA, K., GULTEKIN, T., SAGIR, M., BEKTAS, Y., AKIN, G., GULEC, E.
The purpose of this study is to evaluate the regional variations of body morphology in Turkish population. Cross-sectional nationwide anthropometric survey from 5 regions (the Marmara, the Aegean, the Mediterranean, the Black Sea and Central Anatolia regions), was carried out with 1350 adult individuals. Data on 22 anthropometric measurements were collected in accordance with the procedures described by the International Biological Program (IBP). Basic statistics, the Kolmogorov-Smirnov normality test, the student t test and the analysis of variance were applied to the data obtained through Statistical Package for Social Science (SPSS). All the measurements showed significant sexual dimorphism (p<0.05). Analysis of variance showed greater regional variation in males than females. Illiospinal height, elbow breadth, relative sitting height and cephalic index indicated significant regional variations in males, and weight, sitting height, illiospinal height, lower limb length and relative sitting height in females (p<0.05). Brachycephalic tendencies were observed in both sexes. In females there were no significant difference between regional groups in all the head measurements and cephalic indexes. In conclusion, our results suggest that adult body dimensions differ between regional groups in Turkey, and it may relate with socio-economic levels, genetic factors and ethnicity.
ポスター P−6
中手骨長からの成人身長推定
○高井省三(筑波大・人間総合科学)、瀧内繭子、松浦秀治(お茶の水女子大・生活科学)
Estimating stature from metacarpal lengths
TAKAI, S., Takiuchi, M., Matsu’ura, S.
X線写真で計測した女子286名、男子88名の中手骨長(m1〜m5: mm)からの成人身長(H: cm)推定式を検討した。赤池の情報量基準AICが小さく且つ係数が有意なモデルは、性別を考慮しないケースではH=64.04+0.949×m1+0.894×m2(R2=0.636、残差=4.31)が、性別をダミー変数(男:1、女:0)として取り入れたケースではH=86.26+0.448×m1+0.857×m2+6.168×性別(R2=0.727、残差=3.74)が最良であった。ロジスティック回帰分析は、上記の最良モデルに含まれるm1が性判別に最も貢献している変数(誤判別率:15.2%)であることを示した。
ポスター P−7
解剖学的方法による縄文人の身長と比下肢長の推定
佐伯史子(東北大・医・人体構造学)
Stature estimation and lower limb proportion of the Jomon based on the anatomical method
SAEKI, F.
解剖学的方法(anatomical method)を用いて男女各10体の縄文人の全身骨格を復元し、身長と比下肢長を算出した。現代のアジア、オーストラリア先住民,ヨーロッパ,アフリカの各集団の生体計測値と比較した結果、縄文人の身長は男女とも現代のヨーロッパ集団やアフリカ集団よりも低く、東アジア集団の範囲に含まれていた。縄文人の比下肢長も身長と同様に東アジア集団の範囲に含まれていたが比較的高い値であった。縄文人をいわゆるモンゴロイドと単純にみなすことには慎重な態度をとるべきであり、モンゴロイドとは異なるプロポーションを有する集団と縄文人の関係を想定する必要も考えられた。
ポスター P−8
大腿骨頭窩の形態からの新しい年齢推定法
坂上和弘(東北大・人体構造学)
New method of estimating age-at-death using the fovea of femoral head
SAKAUE, K.
成人遺体の死亡時年齢は人骨から得られる情報のなかで重要なものの一つである。年齢推定を行なう際、頭蓋骨縫合の閉鎖状況、恥骨結合面の形態、寛骨耳状面の形態、歯の咬耗度などの骨形態が現在用いられている。これらの年齢推定法は複数を併用したほうが精度は良いと考えられている。しかし、多くの場合人骨の保存状況はこれらの骨形態が複数観察可能なほど良好ではない。そこで残存しやすい部位における骨形態からの年齢推定方法として、大腿骨頭窩の形態が利用できるのではないかと考えた。年齢・性別既知の近代日本人骨467個体の右大腿骨を資料として用いて大腿骨頭窩の骨形態と死亡時年齢との関係を調査した。その結果、大腿骨頭窩の形態と死亡時年齢とにはある程度の関係性が見られたので、模型標本も用いて新しい年齢推定法として提示する。
ポスター P−9
山陰地方古人骨にみられる顔面平坦度の時代変化について(予報)
○川久保善智(鳥取大・医・形態解析)、井上貴央(鳥取大・医・形態解析)
Temporal changes of the facial flatness in the skulls from San-in district
KAWAKUBO, Y., INOUE, T.
山陰地方からはこれまで古墳時代を中心に多数の人骨が発掘されてきたが、近年さらに青谷上寺地や青木などの弥生遺跡からも保存良好な人骨が出土している。今回はこれらの頭蓋資料をもとに山陰地方における顔面平坦度(前頭骨、鼻骨、頬上顎骨平坦度)の時代変化を検討した。その結果、弥生から江戸まで前頭骨や鼻骨にはあまり大きな変化が認められなかったものの、頬上顎部では古墳から江戸にかけて著しく立体性が増加したことが示された。この頬上顎部の変化については近隣の山口や北部九州でも同様の傾向が認められるので、江戸以後にこの変化が顕在化する東日本に比べ、西日本ではより早い時期にこの変化が始まっていた可能性が示唆された。
ポスター P−10
青谷上寺地遺跡出土の弥生人頭蓋の形態学的検討
○園田真之(鳥取大・医・歯口外)、川久保善智(鳥取大・医・形態解析)、井上貴央(鳥取大・医・形態解析)
Morphological study of Yayoi skulls from Aoya-kamijichi site
SONODA, M., KAWAKUBO, Y., INOUE, T.
青谷上寺地遺跡出土の弥生人骨は、その特異な出土状況や殺傷痕によって関心を集めている。また山陰地方における数少ない良好な弥生人骨としても貴重であるが、その形態学的特徴については不明な点が残されている。今回は頭蓋の計測データから、同年代の近隣集団との比較・検討を行った。これまでに報告されている土井ヶ浜と金隈から出土した男性頭蓋のデータについて主要9項目計測値に基づく正準判別分析を行った結果、正答率が79.5%の判別式が得られた。これに青谷のデータを適用したところ、その多くは金隈に判別された。すなわち、青谷弥生人は地域的に近い土井ヶ浜よりむしろ北部九州の金隈に近い集団であった可能性が示唆された。
ポスター P−11
長崎県壱岐島原の辻遺跡出土の弥生時代人骨
〇分部哲秋1、佐伯和信1、近藤修2、岡本圭史1、長島聖司1(1長崎大院・医歯薬学総合研究科・発生分化機能再建学)(2東京大院・理学系研究科)
Yayoi skeletal remains excavated from the Harunotsuji site in Iki island, Nagasaki prefecture
WAKEBE, T., SAIKI, K., KONDO, O.,OKAMOTO, K., NAGASHIMA, S.
原の辻遺跡は長崎県壱岐市(壱岐島)に所在し、『魏志』倭人伝に記された「一支国」の中心地と想定されている遺跡であり、考古学的には当時本遺跡において生活した人々は、この地を中継基地として大陸及び九州近隣との交易を担った集団と想像されている。2001年度には、丘陵西側裾部の低湿地に当たる区域(コヨウ4区)が発掘調査され、環濠内より弥生時代後期前半に属す人骨群が検出された。人骨は散乱に近い状態で出土したが、頭蓋5個体のうち1体の男性頭蓋は遺存状態が比較的良好である。出土人骨は、最も遺存数の多い大腿骨から少なくとも11体(男性8体、女性2体、小児1体)が存在する。計測結果をもとに、これらの人骨形質について報告する。
ポスター P−12
佐賀県鳥栖市柚比梅坂遺跡C区から出土した弥生人の四肢骨形態(予報)
○佐伯和信、分部哲秋、岡本圭史、長島聖司(長崎大院・医歯薬学総合研究科・発生分化機能再建学)
Morphological characteristics of the limb bones in the Yayoi skeletal remains from the C area at the Yubi-Umesaka site, Tosu city, Saga prefecture (preliminary report)
SAIKI, K., WAKEBE, T., OKAMOTO, K., NAGASHIMA, S.
北部九州・山口地域弥生人における骨格形態の地域差・遺跡集団差究明の一環として、佐賀県鳥栖市北西部の柚比遺跡群から出土した弥生人骨について鋭意調査を進めている。今回、柚比遺跡群の一つである柚比梅坂遺跡C区から出土した弥生人骨男性27例、女性12例の四肢骨について計測的調査・分析を行ったので、その結果について報告する。本発表では近隣の安永田遺跡、福岡県金隈遺跡、山口県土井ヶ浜遺跡の弥生人など周辺の代表的集団の成績と比較・分析する中で本弥生人の四肢骨形態の特徴を明らかにするともに、北部九州・山口地域内における形態差についても検討する予定である。
ポスター P−13
オホーツク文化人骨の頭蓋形態小変異
○米須敦子(琉球大・医・解剖)、埴原恒彦(佐賀大・医・解剖人類)、天野哲也、小野裕子(北海道大・総合博物館)、米田穣(環境研・化学環境)、譜久嶺忠彦(琉球大・医・解剖)、石田肇(琉球大・医・解剖)
Nonmetrical cranial variation of the Okhotsk cultural people
KOMESU, A., HANIHARA, T., AMANO, T., ONO, H., YONEDA, M., FUKUMINE, T. ISHIDA, H.
これまで、北海道オホーツク海岸からサハリンに分布するオホーツク文化の人骨の頭蓋形態小変異の研究はアイヌおよび北東アジアの人々との関係を明らかにしてきた。さらに、サハリンや北海道での地域的変異が存在する可能性が示唆された。2004年から始まった北大総合研究博物館に保管されるモヨロ貝塚を中心とするオホーツク文化の人骨の整理調査は、資料数を大幅に増加する結果をもたらした。そこで、人骨から年代測定を実施するとともに、北海道北部、東部、サハリンでの地域的多様性を分析した。具体的には、各集団間のMMDを計算し多変量解析法で検討するとともに、集団内、集団間変異をR-matrix法およびFstにより検討した。
ポスター P−14
うるま市具志川グスクの発掘調査(予報)
○宮城弘樹(今帰仁村教育委員会)、西銘章(嘉手納高等学校)、片桐千亜紀(沖縄県立埋蔵文化財センター)、大城剛(うるま市教育委員会)、土肥直美(琉球大・医・第1解剖)
Archaeological excavation at burial site of the Gushikawa-Gusuku, Uruma-city, Okinawa (preliminary report)
MIYAGI, H., NISHIME, A., KATAGIRI, C., OSHIRO, T., DOI, N.
うるま市具志川グスクは過去に2度の発掘調査が行われており、貝塚時代後期終末期から15世紀中頃の遺構や遺物が検出されている。今回、我々が発掘調査を行ったところは、具志川グスクの北西側崖下に形成された葬地である。この崖下地区は、平成7年に具志川市教育委員会によって行われた試掘調査において、弥生時代の九州系土器と集骨された埋葬人骨が確認されていたところであり、貝塚時代からグスク時代の沖縄人の歴史解明に、考古学・人類学双方から取り組むことの出来る貴重な遺跡である。今回、我々は、文部科学省科学研究費の補助を受け、学術調査を実施する機会を得たので、その概要を報告する。
ポスター P−15
うるま市具志川グスク出土の人骨(予報)
○土肥直美(琉球大・医・第1解剖)、篠田謙一(国立科学博物館)、米田穣(国立環境研究所)、大城剛(うるま市教育委員会)
Human skeletal remains from burial site of the Gushikawa-Gusuku, Uruma-city, Okinawa (preliminary report)
DOI, N., SHINODA, K., YONEDA, M., OSHIRO, T.
うるま市具志川グスク出土の人骨について報告する。今回、我々が発掘を行ったグスク北西側崖下地区からは、すでに、平成7年の具志川市教育委員会による試掘調査と昨年我々が行った試掘調査によって、弥生時代の九州系土器とともに集骨された埋葬人骨が多数確認されていた。今年8月の本調査では調査区をさらに拡張し、遺構や遺物との関係についても調査を行った。残念ながら人骨の保存状態は良好とは言えず、集骨された人骨が個体識別の出来ない状態で出土した。しかしながら、下顎切歯には抜歯の痕跡が認められ、また、焼けた骨がかなりの割合で出土するなど、南西諸島の葬制・墓制に関する興味深い知見も得られている。
ポスター P−16
琉球列島におけるヒト歯冠計測値の多様性:琉球列島と他のアジア集団との比較検討
○当真隆(琉球大・医・解剖)、埴原恒彦(佐賀大・医・解剖人類)、砂川元(琉球大・医・歯口外)、羽地都映(琉球大・医・解剖)、石田肇(琉球大・医・解剖)
Metric dental diversity of Ryukyu Islanders: a comparative study among Ryukyu and other Asian populations
TOMA, T., HANIHARA, T., SUNAKAWA, H., HANEJI, K., ISHIDA, H.
琉球列島は北に本土九州と南に台湾と連なる列島であり、その歴史・文化・言語そして生物学的な特殊性により、人類学の分野では非常に興味深い地域で以前より注目されてきている。そこで今回、琉球列島に現存するヒト集団より歯の石膏模型を採取し、歯冠近遠心・頬舌的幅径の計測値を調べる事により、その地域内・地域間の多様性および他のアジア集団との比較検討を行った。琉球列島のサンプル集団としては、沖縄本島より北に位置している徳之島52個体、南西に位置している宮古島202個体と石垣島147個体、そして沖縄本島中部に位置している嘉手納234個体と北部に位置している今帰仁65個体である。
ポスター P−17
先島諸島におけるヒト歯冠形態の多様性:先島諸島集団と近隣諸集団との比較検討
○羽地都映(琉球大・医・解剖)、埴原恒彦(佐賀大・医・解剖人類)、砂川元(琉球大・医・歯・口外)、当真隆(琉球大・医・解剖)、石田肇(琉球大・医・解剖)
Nonmetric dental variation of Sakishima Islanders: a comparative study among Sakishima and other neighboring populations
HANEJI, K., HANIHARA,T., SUNAKAWA,H., TOMA,T., ISHIDA, H.
先島諸島のヒト歯冠の形態を調査し、他の琉球列島および近隣諸集団との近縁性や集団内および集団間多様性を検討した。2004〜5年、倫理委員会の承認を受け、先島諸島における12歳から15歳の永久歯列の石膏模型を採取した。宮古(男107、女95)、石垣(男71、女75)を資料として、歯冠形態変異24項目を調査し、他の琉球列島および近隣の7集団との関連性を比較検討した。宮古、石垣は、複シャベルの頻度が低い、宮古は屈曲隆線の頻度が高いなどの特徴が見られた。観察数の少ない項目を除き、各集団間のMMDを計算し、多変量解析法で分析するとともに、集団内、集団間変異をR-matrix法およびFstにより検討した。
ポスター P−18
沖縄県久米島ヤッチのガマ・カンジン原古墓群から出土した古人骨の変形性脊椎関節症について
○諸見里恵一、土肥直美、譜久嶺忠彦(琉球大・医・解剖)、西銘章(嘉手納高校)、埴原恒彦(佐賀大・医・人類解剖)、石田肇(琉球大・医・解剖)
Vertebral osteoarthritis of early Modern human remains from Kumejima, Okinawa
MOROMIZATO, K., DOI, N., FUKUMINE T., NISHIME, A., HANIHARA, T., ISHIDA, H.
沖縄県久米島のヤッチのガマ・カンジン原古墓群から出土した近世人骨、成人男性57例、女性45例の変形性脊椎関節症を調査した。男性の方が女性より頻度が高く、右側の方に多い傾向がある。関節突起においては頚椎で頻度が高く、下部胸椎、腰椎の順で続いた。椎体では腰椎が最も多く、頚椎、胸椎の順に続く。椎体では男性で下部胸椎、腰椎の一部で右側に多く認められ、女性では左右差はない。右側の関節突起下面においては、頚椎下部、胸椎上部、中部で、左側では胸椎下部で男性の頻度が高く有意差を認めた。椎体では胸椎下部、腰椎の右側で男性が著明に多く性差が認められた。さらに総合的に判断するため、多変量解析で分析し結果を報告する。
ポスター P−19
千葉県流山市三輪野山遺跡から出土した近世人骨の齲蝕状況
○小山田常一1、井川一成1、北川賀一1、真鍋義孝1、加藤克知2、松下孝幸3、六反田篤1 (1長崎大院・発生分化機能再建学・頭頸部構造解析学分野、2長崎大・医・保健学科、3土井ヶ浜遺跡・人類学ミュージアム)
Dental pathology of the excavated skeletons from Chiba Prefecture during the early modern age
OYAMADA, J., IGAWA, K., KITAGAWA, Y., MANABE, Y., KATO, K., MATSUSHITA, T., ROKUTANDA, A.
これまで演者らは九州各地から発掘された近世人骨の齲蝕状況について調査を行ってきた。その結果、福岡県から発掘された武士階級と庶民階級の集団とでは齲歯率に有意差が認められるなど、興味深い所見が得られている。一方、東京から発掘された近世人骨を調査した佐倉や井上らの結果では、江戸在住の近世人の齲歯率は福岡の資料よりも高く、この時代の齲歯率に地域差があったことが疑われる。しかし、調査者の判断基準の違いなどもあり、これまでお互いの調査結果の直接的な比較は難しかった。今回、千葉県流山市の三輪野山遺跡から発掘された近世人骨の歯牙の古病理学的観察を行い、これまでのデータと比較を行い、地域差について検討した。
ポスター P−20
岩手県川崎村河崎の柵擬定地遺跡出土近世人骨について
○奈良貴史(国際医療福祉大・リハビリテーション)、鈴木敏彦(東北大・院・歯・口腔器官構造)、古田美智子(東北大・歯)、片桐俊介(西仙台病院)、南條さつき(齋藤病院)
Human Skeletal remains of the early modern period from "Kawasaki no saku giteichi" site, Kawasaki, Iwate Prefecture
NARA, T., SUZUKI, T., FURUTA, M., KATAGIRI, S., NANJYOU, S.
河崎の柵擬定地遺跡は,岩手県東磐井郡川崎村の北上川東岸に所在する,縄文時代から近世の遺跡である。2003年および2004年の発掘調査の際,近世墓が220基あまり検出された。人骨は保存状態が良好なものから骨片まで様々であるが、200体近く確認された。そのうちの2基は鉄鍋が頭蓋にかぶせられた状態で出土しており、近世東日本に習俗として存在した鍋被り葬と思われる。演者らは、昨年の第58回大会において歯のサイズを他集団と比較検討した結果、縄文時代人、北海道アイヌよりも渡来系弥生時代人、関東古墳時代人、中・近世人により近いことを示した。今回は、頭蓋および四肢骨の計測値・観察の結果を報告する。
ポスター P−21
岩手県河崎の柵擬定地遺跡出土人骨に認められた上顎洞内骨増殖
○鈴木敏彦(東北大・院・歯・口腔器官構造)、片桐俊介(西仙台病院)、南條さつき(齋藤病院)、古田美智子(東北大・歯)、奈良貴史(国際医療福祉大・リハビリテーション)
Isolated bone fragment in the maxillary sinus found in human skull of the early modern period from "Kawasaki no Saku Giteichi" site, Iwate Prefecture
SUZUKI, T., KATAGIRI, S., NANJYOU, S., FURUTA, M., NARA, T.
河崎の柵擬定地遺跡は岩手県東磐井郡川崎村の北上川東岸に所在する縄文時代から近世の遺跡である。2003年の調査の際に発掘された近世の熟年男性人骨1体について、左側上顎洞内に巨大な骨増殖塊が認められ、いわゆる上顎洞内遊離骨片と考えられた。このような症例について耳鼻咽喉科領域および口腔外科領域からの臨床報告は散見されるが、古人骨に関しての報告例は極めて少ない。今回、本症例の形態的観察結果および病理学的検討について報告する。
ポスター P−22
鎌倉由比ヶ浜から発掘された中世日本人上顎洞の古病理学的研究
〇静島昭夫(日本大・松戸歯・解剖人類形態)、長岡朋人(聖マリアンナ医大・医・解剖)、平田和明(聖マリアンナ医大・医・解剖)、金澤英作(日本大・松戸歯・解剖人類形態)
Palaeopathological study of maxillary sinus of the Medieval Japanese discovered from the Kamakura Yuigahama
SHIZUSHIMA, A., NAGAOKA, T., HIRATA, K., KANAZAWA, E.
鎌倉由比ヶ浜の頭蓋集積墓から発掘された中世日本人古人骨資料をもとに、上顎洞骨壁各面について観察を行い、古病理学的な分類・考察を試みた。上顎洞の骨壁で観察される骨増殖や骨吸収は上顎洞炎との関連が指摘されており、また上顎洞炎の罹患頻度は生活環境と密接な関わりがある、とされているが、これまで日本人集団における上顎洞炎の地域差・時代差の研究はなされていなかった。今回の資料については約六割の上顎洞に病変が認められたが、これは比較的高頻度と考えられる。本報告では、洞内面の増殖像や吸収像の分類法やその頻度について詳述する。
ポスター P−23
弥生人骨における上顎洞異所性骨形成(遊離骨片)の一例
○井上貴央(鳥取大・医・形態解析)、川久保善智(鳥取大・医・形態解析)
A case of ectopic osteogenesis in maxillary sinus ( “isolated bone fragment”) found in Yayoi human skull
INOUE, T., KAWAKUBO, Y.
出雲市青木遺跡から出土した弥生人骨の右上顎洞内に、巨大な骨増殖が認められた。この病変は洞内の外壁〜底部にかけて認められ、表面は平滑で辺縁は骨棘を有し、洞壁と癒着していた。その特徴から本疾患は“遊離骨片”として報告されてきたものであり、日本における古人骨症例としては三ツ谷縄文貝塚(鈴木ら1983)の例が知られている。この病因については諸説あるが、本頭蓋の患側の犬歯窩は対側よりも深くなっており、病因の解明に重要な所見ではないかと考えられた。本疾患は粘膜下組織に生じるが、遊離せずに壁と癒合している場合が多く、骨折による遊離骨片とも紛らわしいので、異所性骨形成ectopic osteogenesisと呼ぶ方がふさわしい。
ポスター P−24
Root and root canal morphology of Sri Lankan and Japanese maxillary and mandibular molars – A preliminary study
○PEIRIS, R., TAKAHASHI, M. (Nihon Univ. Grad. Sch. of Dent. at Matsudo), SASAKI, K., KANAZAWA, E. (Dept. of Anatomy and Physical Anthropology, Nihon Univ. Sch. of Dent. at Matsudo)
Population difference of root and root canal morphology of maxillary and mandibular molar was investigated in Sri Lankans and Japanese. 155 maxillary and 233 mandibular first and second molars were used. Mesiodistal and buccolingual crown diameters, root heights, root widths and furcation heights were measured. Root canal morphology was studied using a clearing technique. In both populations, all crown and root dimensions were larger in males than females. Between the two populations, crown dimensions and root widths were larger in Japanese while root and furcation heights were larger in Sri Lankans. As the sample sizes were small, male and female data were combined to study the root canal morphology. Root canal morphology that was different between first and second molars showed highly variable pattern in the mesial root (MR) of mandibular molars and mesiobuccal root (MBR) of maxillary molars. Population differences were noticed in MR of M1 and M2 and MBR of M1 and M2. This result can be explained from an anthropological and ontogenetic perspective.
ポスター P−25
歯の計測値に及ぼす咬耗の影響――吉胡貝塚人骨の例――
佐倉朔(名誉会員)
Influence of attrition on the dental measurements – A case from Yoshiko shell-mound
SAKURA, H.
歯の大きさに基づいて人類集団間の異同を明らかにする試みは多い。計測値で最もよく用いられるのは歯冠の三主径のうち、冠高を除く近遠心径と唇舌径/頬舌径の二つである。しかしこれまでの多くの研究では、これら少数の項目でも、計測誤差の問題に対する注意が不足していたと考えられる。主要な誤差である、計測技術の差による観察者間誤差と、咬耗その他の要因による形態変化から生ずる誤差は、ともに重要である。演者はかって(1970, 1988)各歯種における咬耗度と歯冠計測値の減少量との関係を推定したが、ここでは吉胡貝塚人骨の歯の計測資料を例にとり、咬耗の影響を推測してみる。
ポスター P−26
咀嚼運動のシミュレーションデータにおけるブートストラップ解析
大橋克巳(東京大・病・顎歯科)
Bootstrap analysis for simulated masticatory motions
OHASHI, K.
データリサンプリング法を咀嚼運動に適用した場合における、同運動の連続性に関するパラメータについての検討はあまり行われていない。咀嚼運動はパターンの繰り返しで構成されることから、リサンプリングにはブロック・ブートストラップ法が適用可能と考えられ、今回、単純な構造のシミュレーションデータにおける、同法でのリサンプリングの影響について調べるものとした。なお、従来から利用されている変動係数との違いを明確にするために、使用したデータは、すべて変動係数は同一となるように周期の長短を設定したグループ間での比較とした。これらのブートストラップ解析から確認された、咀嚼運動に関する統計値の傾向について報告する。
ポスター P−27
マヤ文明コパン遺跡(ホンデュラス共和国)出土人骨の概要
○吉田俊爾、佐藤巌(日本歯科大・歯・解剖)、中村誠一(ホンデュラス国立人類学歴史学研究所)
Human skeletal remains from Copan sites, Maya, Honduras
YOSHIDA, S., SATO, I., NAKAMURA, S.
2004年3月調査のホンデュラス共和国コパン遺跡出土人骨については、第58回人類学会大会(長崎)において報告した。引続き、2005年3月にもコパン遺跡出土人骨調査の機会に恵まれたので、その人骨の概要について報告する。今回調査した人骨は熟年期男性2体・壮年期男性3体・壮年期女性2体・幼児2体の計9個体分で、所属年代は7世紀前半頃と考えられている。これらの人骨の保存状態は全般的にあまり良くないが、その中で埋葬61人骨(壮年期・男性)は比較的良好である。この埋葬61人骨は左側臥伸展位の状態で出土し、頭蓋は人工的に変形されている。頭蓋の最大長は183mm、バジオン・ブレグマ高は147mmで、右上腕骨最大長337mmから算出した推定身長は162cmである。また、埋葬23人骨(熟年期・男性)の上顎左右の中切歯・側切歯・犬歯および下顎右犬歯に、また、埋葬46人骨(熟年期・男性)の上顎左右の中切歯にはヒスイの埋め込みが見られる。
ポスター P−28
ペルー南海岸、Cerro Carapoから出土したナスカ戦勝首級(Nasca trophy head)、特に前頭部の穿孔について
○加藤克知(長崎大・医・保健)、篠田謙一(国立科学博物館・人類)、北川賀一、真鍋義孝、小山田常一、六反田篤(長崎大院・頭頸部構造解析学分野)
Nasca trophy head from Cerro Carapo, Peru, with special reference to a perforation through the frontal bone
KATO, K., SHINODA, K., KITAGAWA, Y., MANABE, Y., OYAMADA, J., ROKUTANDA, A.
A cache of 48 Nasca trophy heads was excavated from the foot of Cerro Carapo, a hill located in the Palpa Valley in the Río Grande de Nasca drainage (Browne et al. 1993). The general descriptions of characteristics of these trophy heads were already published (Browne et al. 1993; Verano 1990, 1995). In 2004, we had an opportunity to observe 41 available heads of them in the National Museum of Lima, Peru. Trophy heads from Cerro Carapo were completely skeletonized without any soft tissues. These specimens also reveal some additional details of the preparation process generally obscured in well-preserved heads by overlying soft tissue. According to Verano (2003), Nasca trophy head shows two principal features of a perforation through the frontal bone and damage to the base of the skull. We will present such interesting specimens and report on the morphological variation in size, form and position of the frontal perforation, in particular.
ポスター P−29
ペルー北部海岸地区プレインカ期(モチェ・シカン)における歯の形態の時代的変異
○真鍋義孝1、北川賀一1、篠田謙一2、加藤克知3、小山田常一1、井川一成1、六反田篤1(1長崎大院・医歯薬・頭頸部構造解析学、2国立科学博物館・人類、3長崎大・医・保健)
Temporal variation of dental morphology from the pre-Inca Moche to Sican period on the Peruvian north coast
MANABE, Y., KITAGAWA Y., SHINODA, K., KATO, K., OYAMADA, J., IGAWA, K., ROKUTANDA, A.
The biological difference between two continued pre-Inca period populations on the Peruvian north coast was investigated based on dental morphology. Twenty seven nonmetric traits of tooth crowns and roots of human remains excavated from the Moche culture period (AD 100-700) and the Sican culture period (AD 700-1375) were counted and their incidences were compared. The biological distance analysis based on the 27 dental traits showed relative difference between the two pre-Inca period populations in the inter-populational variation of the New World and Asia. The temporal difference between the two pre-Inca populations was compared with the regional difference between the north coast Sican population and the middle coast Chancay (AD 1000-1300) population. Furthermore, the argument that the dental variation in the New World includes the Sundadont pattern as well as the Sinodont pattern was evaluated based on the results of this study.
ポスター P−30
歯冠計測値にみる先スペイン期ペルー住民の地理的変異と時代変化(予報)
○北川賀一(長崎大院・医歯薬)、篠田謙一(国立科学博物館・人類)、加藤克知(長崎大・医・保健)、真鍋義孝、小山田常一、井川一成、六反田篤(長崎大院・医歯薬)
An odontometric analysis of the pre-Hispanic Peruvian samples: biolgical affinity and environmental conditions
KITAGAWA, Y., SHINODA, K., KATO, K., MANABE, Y., OYAMADA, J., IGAWA K., ROKUTANDA, A.
南米アンデス地域では、多様な生態的環境のもと様々な文化が繁栄した。しかし、それぞれの文化をどのような人々が担っていたのか、形質人類学的には不明な点も多い。
今回我々はペルー北部海岸地域のモチェ(モチーカ)(0-700 AD頃)、シカン(ランバイェケ)(700-1375 AD頃)、南部海岸地域のパラカス・ナスカ(BC 400-550 AD頃)〜イカ・チンチャ(1000-1412 AD頃)、南部高地ウルバンバ川流域のインカ(1400-1532 AD頃)人骨の歯冠計測値について調査する機会を得た。資料数が少なく予備的ではあるが、各々の特徴、互いの関係について分析した結果を報告したい。
ポスター P−31
中国チベット族の歯冠形態の特徴
○菊池直浩、小林繁(九州歯科大学生命科学講座頭頸部構造解析学分野)
Dental characteristics in the Tibet tribe of Yunnan, China
KIKUCHI, N., KOBAYASHI, S.
The frequencies of 19 nonmetrical dental traits of 160 Tibetan, Yunnan, China are described and compared with European, North African, sub-Sahara African and 10 Asian populations. Cluster analysis and multidimensional scaling analysis were practiced among these populations. By the cluster analysis, all populations were divided two large clusters. One side was included Tibet tribe and 9 East Asia populations, the other side European, North African, sub-Sahara African and Uigur. By the multidimensional scaling analysis, the Tibet tribe was located in nearest Han and Recent Japan in 9 East Asia populations. The Tibet tribe was closest the Han tribe in East Asian populations from cluster and multidimensional scaling analysis.
ポスター P−32
歯列弓形態の分類について
橋本登(大阪歯科大学・歯科矯正学講座)
Classification of dental arches by cluster analyses
Hashimoto, N.
【目的】現在、歯列弓形態の分類にはThompson が発表した方形、帯円方形、帯円形、帯円V字形の4形が凡庸されている。また、歯列弓の形態に関する研究は肉眼的な主観による分類から、定量的なもの、関数などを用いた数字による客観的な方法など色々なものがある。今回、歯列弓を構成している歯と歯列弓の関係を多変量解析を用いて検討してみた。【材料と方法】大阪歯科大学歯科矯正学講座所蔵の100例の石膏平行模型を、上下顎歯列弓をユニスン社製模型計測器を用いて計測した。【結果・考察】歯列形態のうち、約60%を占める帯円方形は平均的な特徴を表わしているのに対し、他の形態ではそれぞれに特徴的な項目がみられた。
ポスター P−33
ナチョラピテクスと現生霊長類における骨盤形態の比較
○中野良彦(大阪大院・人間科学・生物人類)、荻原直道、巻島美幸、清水大輔、加賀谷美幸(京都大院・理・自然人類)、国松豊(京都大・霊長研)、石田英実(滋賀県立大・人間看護)
The comparison of the pelvic morphology between Nacholapithecus and recent primates
NAKANO, Y., OGIHARA, N., MAKISHIMA, H., SHIMIZU, D., KAGAYA, M., KUNIMATSU, Y., ISHIDA, H.
ケニア北部、ナチョラ地域から発見された中新世類人猿であるナチョラピテクスについては、日本ケニア合同調査隊により多くの化石標本が発見されている。それらの標本のうち、骨盤部の形態について、現生霊長類および他の化石類人猿との比較を行っており、現世狭鼻猿類とくらべて坐骨結節の発達が著しく弱いこと、腸骨の形状では類似性が強いこと、坐骨棘の位置については、個体差がみられるものの、ヒヒやテングザルなどと近い値を示していることなど、これまで寛骨の形態について報告してきた。今回の発表では、さらに仙骨の一部と見られる標本についての知見を加え、形態的特徴と関連した運動適応について、現生霊長類との比較から考察する。
ポスター P−34
原猿3種の肩関節筋における筋紡錘数について
○日暮泰男(大阪大・人間科学・人類)、谷口雪(大阪府立市岡高校)、熊倉博雄(大阪大・人間科学・人類)
Counting the muscle spindles of the shoulder joint muscles in the three prosimian species
HIGURASHI, Y., TANIGUCHI, Y., KUMAKURA, H.
肩甲骨に付着する筋の機能分析を目的に、原猿の大円筋、小円筋、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋の5筋について組織学的検索を継続中である。ワオキツネザルおよびスローロリスに関する結果は既に解剖学会全国学術大会にて報告した。今回は、ガーネットガラゴについての結果をまとめたので報告する。5筋について、肩関節における配置を記録するために写真撮影を行なった後、全筋をセロイジン包埋、40μm厚の連続切片を作製し、アザン染色を施した。この標本によって筋線維と筋紡錘に関する組織計測学的計測を行なった。得られた結果について、既に蓄積しているワオキツネザルとスローロリスの結果と比較し、種特異的運動様式との関連を検討した。
ポスター P−35
モグラ前肢帯の機能解析
○藤野健(東京都老人研・実験動物)、高橋裕(防衛医大・生物学)、松村秋芳(防衛医大・生物学)、木村邦彦(木村成長研)
Functional anatomy of the Mole shoulder girdle
FUJINO, K., TAKAHASHI, Y., MATSUMURA, A., KIMURA, K.
モグラに関しては筋骨格系の総覧的な記載はこれまで散見されるものの、各部位に的を絞り掘り下げた内容の機能形態学的言及は甚だ少なかった。霊長類が哺乳類の基本形を保ち、知能の発達によって環境に適応する方向にある動物群とすれば、形態的改変を通じて地中生活性に高度に適応したモグラはその1つの対極に位置する動物と言えるだろう。そしてこの様な特殊化を遂げた動物の形態を観察・対照する事を通じて霊長類の形態の持つ隠れた意義が炙り出される可能性がある。この視点に立ち、昨年の高橋らのモグラ足の形態観察・機能解析に続き、今回演者らは肩帯及び上腕骨とその周囲の筋の観察・記載を行い、マカクとの比較も交え機能的意義について考察を加える。
ポスター P−36
ヒト表情筋の筋線維構成に関する研究
○伊藤純治、森山浩志(昭和大・医・解剖)、島田和幸(鹿児島大・歯科応用解剖)
Morphological evaluation of the human facial muscles
ITO, J., MORIYAMA, H., SHIMADA, K.
表情筋は繊細で複雑な感情表現をつくる皮筋で、他の骨格筋と同様に横紋筋線維で構成される。表情筋の特徴を検討するために、セロイジン包埋、HE染色標本を作製し、その筋線維構成(筋腹横断面積、1㎟中の筋線維数、筋線維総数、筋線維径、密度)を計測し、他の骨格筋と比較検討した。筋腹横断面積、筋線維総数は下唇下制筋が大であった。筋線維径は口角挙筋、大頬骨筋、笑筋、頬筋などが大で、眼輪筋、口輪筋は小であった。表情筋の中では口角付近の筋において筋線維径が比較的大であったが、広頚筋や咬筋、側頭筋、四肢の筋に比べ小であった。
ポスター P−37
加齢により神経線維はどうなるか
○野中直子(昭和大・歯・口腔解剖)、後藤昇(昭和大・医・解剖)、猪口清一郎(昭和大・医・解剖)
How the nerve fibers change with aging?
NONAKA, N., GOTO, N., INOGUCHI, S.
神経線維は中枢・末梢の両神経系に存在する。人口の高齢化とともに生体機能の低下が社会問題になっている。神経系は加齢により変化があるかどうかが明らかにされていないので、神経線維が変化するかどうかを調べた。錐体側索路(中枢神経)、末梢神経系では上顎神経(脳神経)、深腓骨神経(脊髄神経)、大内臓神経と小内蔵神経(交感神経)を対象とした。解剖体から採取した標本でクロム酸二次固定、ニトロセルロース包埋の横断切片を作成し、顕微鏡と画像解析装置を用いて軸索面積を計測した。計測を行った神経線維の中では大内蔵神経以外は加齢とともに軸索の横断面積が減少することは神経機能を評価するうえで重要である。
ポスター P−38
ヒト喉頭腔の形態学的観察-1.老齢期の男女差について‐
○佐藤巌(日歯大・歯・解剖)、三輪容子(日歯大・歯・解剖)、島田和幸(鹿児島大・院・医歯・歯科応用解剖)、吉田俊爾(日歯大・歯・解剖)
Morphological study of human cavity of larynx -part 1 sex and age in older adults. –
SATO, I., MIWA, Y., SHIMADA, K., YOSHIDA, S.
喉頭腔の形態は発声時に音源や共鳴体として重要であるばかりでなく、臨床的にも構成要素の位置関係は重要である。これまでにCTやMRI像などから立体的構造解析が行われてきた。しかし、肉眼観察では喉頭前庭、喉頭室、声門下腔の位置関係や軟組織形態がより具体的に観察される利点がある。そこで、老齢者の喉頭の詳細な観察とともに、位置関係を解析した。その結果、喉頭腔、甲状軟骨、声門下腔、前庭ヒダ、輪状軟骨板、喉頭蓋で男性が勝ったが、輪状軟骨弓、輪状甲状靭帯では性差は少なく、喉頭室では逆に男性が劣った。また、声帯周囲の軟組織ではヒダの形態に注目し、観察した。これらの所見から老化による形態変化を考察する。
ポスター P−39
Medieval skeletons collected from Maesan-ri tumulus group, Ansung, Korea
Dong Hoon Shin, Wook Kim, Myeung Ju Kim, Sa Sun Cho (Dept of Anatomy, Seoul National University College of Medicine, Seoul, Korea; East Asia Paleoanthropological Research Center; Dankook Univ. College of Medicine, Chonan, Korea)
Of medieval graves found in Maesan-ri, Ansung (安城), Korea, the tumulus in which the medieval bones were collected is thought to be constructed during the first half of 12th century, judging form the characteristics of the accompanying grave goods. As the bones were found in the large earthenware pot with narrow mouth, the deceased was thought to be originally buried in the other place, and after then, only the bones were transferred into the pot, the ancient or medieval burial custom called “Segoljang (洗骨葬)” in Korea. The collected bones were used for sex and age determination. And the stature of the deceased was calculated by the length of the tibia. To reveal whether cremation was performed on these bones, we tried to see the ultramicroscopic structure of the bones using scanning electron microscope. As to the genetic traits of the deceased, we performed DNA analysis for mitochondrial DNA and Y-chromosome analysis. The acquired result was compared with those of the contemporary Koreans, which are already available in our research team.
ポスター P−40
Paleoradiological study to visualize the internal organs of medieval pediatric mummy in Yangju, Korea: multi-detector computerized tomography and three dimensional reconstruction techniques
Dong Su Yoo, Ju Hyun Lee, Sung Sil Park, Gi Dae Bok, Myeung Ju Kim, Dong Hoon Shi (Dept of Radiology and Anatomy, Dankook University College of Medicine, Chonan, Korea; cSeok Ju Sun Memorial Museum, Seoul, Korea; East Asia Paleoanthropological Research Center, Dankook University, Chonan, Kore; Dept of Anatomy, Seoul National University College of Medicine, Seoul, Korea)
Recently reported studies on the medieval mummies in Korea have been regarded as an invaluable source for studying on the physical characteristics of medieval Koreans. In our previous study on 400 year mummy found in Yangju, we performed basic radiological study on the inner organs within the mummy. However, even though the study could show that many internal organs were preserved irrespective of long time lapse after burial, much comprehensive data using multi-detector computerized tomography could not be available up to the present time. In the present study, we tried to perform more sophisticated CT investigation along with post-processing software. As the current trial for reconstructing 3D images based on MDCT data is successful, we will build the image database for the medieval mummies which will be found in the future. Considering the medieval mummies could not be easily investigated enough to be used for scientific purposes, the current study could be the basis for the further studies on relating subjects.
ポスター P−41
臓器試料のミトコンドリアDNAA3243G変異の定量的分析−老化および病気との関連から
○針原伸二(東京大・理・生物科学)、仲村賢一(東京都老人研・老人病ゲノム)、竹内二士夫(東京大・医・病院)、田久保海誉(東京都老人研・老人病ゲノム)
Analysis of mitochondrial DNA A3243G mutation of human organs from the viewpoint of aging and disease
HARIHARA, S., NAKAMURA, K., TAKEUCHI, F., TAKUBO, K.
ヒト・ミトコンドリアDNAの3243番目の塩基がGからAに換わる変異(mtDNA A3242G)は、加齢変化として蓄積していく現象が認められているほか、いくつかのミトコンドリア病と称される病気の主要な原因ともなっている。病理解剖で得られた臓器試料より抽出したDNAを用いて、まず加齢変化としてのこの変異の蓄積状況を解析した。心臓では加齢変化とともに変異が蓄積する傾向がみられ点酸化ストレスが変異の原因とも考えられる。糖尿病の一部は、mtDNA A3243G 変異によって発症すると報告されているが、糖尿病患者を調べたところ,2例で臓器における変異が高い例が見られ、症状との関連等について考察中である。
ポスター P−42
ヨーロッパ人およびアジア人集団における正の選択を受けた遺伝子のゲノムワイドな探索
○木村亮介、藤本明洋、大橋順、徳永勝士(東大・医・人類遺伝)
A genome-wide scan for genes affected by positive selection in European and Asian populations
KIMURA, R., FUJIMOTO, A., OHASHI, J., TOKUNAGA, K.
ゲノムワイドなSNPデータが利用できるようになり、集団間で大きく分化した座位を同定することで、正の選択を受けた遺伝子の探索が可能となった。これまでの研究では、SNPのFSTが指標として用いられたが、正の淘汰を受けた遺伝子多型が、解析されたSNPに含まれているとは限らない。この点を克服するため、ハプロタイプを考慮に入れて解析を行った。本研究では、Perlegen社が公表する3人類集団(African American:AA, European American:EA, Han Chinese:HC)のハプロタイプデータを基に、一定の定義で区切られた連鎖不平衡ブロックにおける、EAもしくはHC集団で最も頻度の高いハプロタイプ(most common haplotype:MCH)のFSTを用いて遺伝子の分化を量った。この方法により、正の淘汰を受けた未知の遺伝子多型の位置を絞り込むことができる。
ポスター P−43
インドヨーロッパ語族、ウラル語族、およびドラヴィダ語族のマラヨポリネシア語亜族からの由来と子音対応法則
大西耕二(新潟大・理・生物)
Malayo-Polynesian origins and consonant-correspondence laws of Indoeuropean, Uralic, and Dravidian language families
OHNISHI, K.
Eurasia大陸の多くの言語族にAustronesia語族(AN)との酷似語彙が見いだされたので(Ohnishi, 1999)、印欧語族(IE), ウラル語族(UR), ドラヴィダ語族(DR)の語彙や再構築祖語を語源辞典等から得てComparative Austronesian Dictionary (Tryon, 1995)の80AN言語の基礎700語彙と厳密比較解析し、ほぼ例外のない子音対応法則を得た。最酷似語彙の分布から、URはMPの西MP, スラウェシ語群(SLW)ウマ語などの近縁言語に由来。DRのタミール語はオセアニア諸語(OC)西メラネシア語群(WOC)アジェラ語(Adzera)とごく親近で、数詞の酷似が著しい( iru "two", etc.)。印欧祖語はSundic, SLW, 西OC等と酷似し、MPの(UR祖語より)原型的な分枝に由来する。