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2014年10月11日[ル・モンド紙] プレ・ネアンデルタール人の腕の発見

 2014年10月9日フランスの国立考古学研究所INRAPと国立科学研究センターCNRSは,ルーアン市から15 km上流のセーヌ河岸の砂利採石場で発見された約20万年前の性別不明の成人(あるいは老人)の「プレ・ネアンデルタール人」の左腕(上腕骨,橈骨,尺骨)を公開した。骨の持主は,すでに「トゥールヴィル・ラ・リヴィエール人」Homme de Tourville-la-Rivièreと命名されている。

 トゥールヴィル・ラ・リヴィエールにはすでに2か所の遺跡があり,石器と共に多くの肉食動物,草食動物,小型哺乳類の骨が出土している。

 トゥールヴィル・ラ・リヴィエール人が住んでいた場所は謎である。発掘された腕は,他の動物の骨と同様に,セーヌ河によってここに運ばれてきた。この腕はこの地に流れ着いたときにはすでに体部から離れていた可能性がある。上肢骨には動物の噛み跡がないので,この腕は動物によって体部から引きちぎられたとは考えられない。

 上腕骨と橈骨にはネアンデルタール人固有の形態学的特徴が認められるが,特に上腕骨の結節稜に,これまでに観察されたことのない長さ4 cmの隆起が認められる。これは野球選手によく見られる病変で,「物を継続的に投げる動作」,あるいは「筋・骨格系のトラブル」の結果生じたと考えられる。いずれにせよこの腕の持主は,腱が引きちぎられるという災難を被ったのである。

 今後,この骨のDNA解析が進めば,このトゥールヴィル・ラ・リヴィエール人の位置は長いネアンデルタール人の系列の中で一層確実になり,女性であったかもしれないということも解明されるだろう。

(Le Monde, 2014-10-11記事,提供 Joseph Degrand 氏, 抄訳 芦澤玖美 氏)